転写因子と DNA の相互作用の自由エネルギー分解

○川島秀一、服部正泰、緒方博之、藤渕航、金久實(京大・化研)

転写因子による DNA 認識機構の理解を目的とし、会合の自由エネルギー分解 を試みた。転写因子が DNA に結合する際の自由エネルギー変化は、両分子 を取り巻く水分子による水和エネルギー、新たに作られる水素結合や塩橋の エネルギー、会合に伴う両分子の自由度の減少に由来するエントロピーなどに、 原理的には分解が可能であると思われている。ここではまず、 PDB (release 74.0) の転写因子のエントリーのうち DNA との結合構造が決定されているものから データベースを構築し、これを基に解析を行なった。これらのエントリーの うち、実験により会合の熱力学定数が求められているものをデータとして使用し、 上記の各エネルギー項が認識にどのように寄与しているのかを調べた。また、 解析に用いた転写因子を結合部位の構造モチーフにより分類し、各エネルギー 項や水素結合・塩橋の数など今回の解析に用いた数種類のパラメータ毎に、 モチーフ内での特徴あるいは、モチーフ間での違いなどがないかを調べた。 これらの解析の結果から、構造モチーフ間での認識の様子の違いについて 分かったことを報告するつもりである。

(第19回日本分子生物学会年会1996年8月26〜30日、28日発表)