コンピューターによる RNA の3次元構造モデリング

○緒方 博之、 金久 實 (京大・化研)

A Computer Modeling Method for the Three-dimensional Structure of RNA
H.Ogata, M.Kanehisa

リボザイムの反応機構、rRNAの機能、tRNAのアミノ酸転移酵素に よる認識などは、RNAの2次構造のみならず、3次元構造との関係 で解明されるべきことである。しかし、3次元構造解析手法として タンパク質で有効なX線結晶解析やNMRは、高分子RNAにおいては、 現在のところそれほど強力ではない。一方、部位特異的突然変異誘 発、クロスリンキング等の実験及び、配列比較、自由エネルギー最 小化などの配列解析により得られる、2次構造及び3次相互作用の データをもとに、リボザイムやrRNAは精力的にその3次元構造モデ ルが提案されている。ところが、多くのモデルは、エキスパートの 経験に頼る方法によって提案されており、恣意性を逃れていない。 自動化された手法としては、擬原子をディスタンス・ジェオメトリー によって折り畳む方法と、いくつかの代表的なヌクレオチドを端か ら組み立てる方法とがあるが、両者とも完成されたものではないと 考えられる。そこで我々は、RNAのモデリングを、実験及び配列解 析から得られる束縛条件を満たす構造の中で、(各ヌクレオチドが 代表ヌクレオチドのどれかに近いといった)制約を満たす構造を自 動的に提出することと捉え、以下のような手法を考案した。まず、 PDBから代表的なヌクレチド構造をいくつか選択した。その代表構 造のうちのどれかと各残基との二乗平均距離の和を目的関数として、 実験から得られる束縛条件を満たす構造を、目的関数の極小化によっ てサーチした。その際、各2面角は離散的な値を取り、リボース環 は典型的なコンフォメーションを取るとし、ダブルヘリックスはA -型とした。また、遺伝的アルゴリズムを採用することにより、サー チの効率を上げることを試みた。今回は、従来の方法との比較及び、 エキスパートが行ったモデルの検証について述べる予定である。

(日本生物物理学会第31回年会1993年10月12〜14日、13日発表)