RNA ステムループの分子モデリング法
○緒方博之、 秋山泰、 金久實 (京大・化研)
A molecular modeling technique for RNA stem-loop structure
H. Ogata, Y. Akiyama and M. Kanehisa
RNAステムループはしばしば分子内及び分子間認識に関
わる構造単位であり、我々は、ステムループの構造解析を
支援するべく、それを対象とした分子モデリング法を考案
し計算機プログラムを開発した。本手法は以下の4つの方
針を基礎としている。(1)ステム領域は標準的なA型ヘ
リックスとして構築する。(2)配列依存のコンフォメー
ションをとるループ領域は束縛条件付きのコンフォメーショ
ン探索問題として扱う。(3)コンフォメーション探索は、
大域的探索を目的としたアルゴリズムと、局所的探索を目
的としたアルゴリズムを併用する。(4)生成されるRNA
の局所構造をあらかじめ設定されたコンフォメーションの
近傍で安定化させることを可能とする。
大域的探索法として、我々は遺伝的アルゴリズムを採用
した。構造に関する制約情報の充足度を評価するフィット
ネス関数には上述の(4)に答えるべくKabsh法によるベ
ストフィッティングを利用した局所構造の安定化項を組み
込んだ。さらに、局所的探索としてCHARMmによりモデル
構造のエネルギー極小化を行なうこととした。tRNAのアン
チコドン・アームおよび T アームに対してしてテストを実
行したところ、結晶構造に極めて近いモデル構造を得るこ
とができた。さらに今回は、遺伝的アルゴリズムで最も重
要と考えらる「交叉」の探索効率に与える影響について議
論したい。今回開発した手法はRNAステムループの構造解
析を進めるうえで極めて有用であると我々は考えている。